僕たちには選ぶ権利がある
「ねえねえ、それってあの漫画のキャラのアクキーだよね?俺もその漫画好きなんだ!」

休み時間、一人でいた揚羽に優が笑顔で話しかけてくれた。それがきっかけで揚羽にたくさんの友達ができ、優の前で本当の自分を見せることができるようになっていった。揚羽にとって、優は人生で一番の友達である。そんな人を好奇な目で見られるのは、耐え難いほど辛い。

揚羽がギュッと拳を握り締めていると、「大丈夫。いつものことでしょ」と上から声が降ってくる。あんなにヒソヒソ言われ、好奇な目で見られていたのに、優は何事もないように笑っていた。

「それより!ジュース何にする?ポップコーンの味も色々あるから迷うよね〜」

優にドリンクなどのメニュー表を見せられ、揚羽は「確かにいっぱい……!どれにしようかな」と考え始めた。

映画館を行き交う人の賑やかな声や足音、そして目の前のジュースやポップコーンの味を決めるているうちに、優を見つめる好奇な視線などは消えてしまっていた。そのことに揚羽はホッとしつつも、またモヤッとしてしまう。
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