弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
補足しておくと、わたしは別に料理上手なわけじゃない。
あの頃の修行のおかげで、ツナマヨおにぎり力だけ強化されているのだ。
弓木くんは黙々とおにぎりを食べていく。
次から次へと、見ていて気持ちのいい食いっぷり。
自分が握ったおにぎりがどんどん弓木くんの口のなかに吸い込まれていくのを、ぼーっと見つめていると。
「もったいねーな」
「え?」
「こんだけ考えられた美味いおにぎり食うチャンス、みすみす逃がすとか、佐藤とかいうやつ損してんなって」
息をのむ。
わたしが黙りこんだ間にも、弓木くんはもぐもぐと、ほんとうに嘘偽りなく美味しそうに食べてくれて、それから「いや、違うか」と呟いた。
「食わせなくて正解。こんな美味いおにぎりを食う資格、あの佐藤とかいうやつにはねえわ」