弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
そうじゃない。そうじゃないの。
別に弓木くんに何かされるかも、とか襲われるかも、とかそういうことを考えているんじゃない。
わたしにそんな魅力がないことだってわかりきっているんだし。
じゃなくて、そもそもの距離が近すぎて困るの……!
狭すぎるシングルベッドの上では、少しでも身じろぎすれば必ず体のどこかが触れ合ってしまう。
「電気、消すよ」
「ま、待っ……」
心の準備ができないまま、ぱちんと音がして明かりが消えた。
真っ暗な視界のなかに、次第にぼんやりと弓木くんの姿が浮かび上がってくる。
うっ、落ちつかない……!
ごろん、と衝動のままに寝返りをうつと。
「!」
あろうことか、同じタイミングで振り向いて。
ひとつのベッドの上、至近距離で、向かい合わせになってしまった。
慌てて、ぐるんっと方向転換しようとしたけれど。
「中瀬、あんま動いたら落ちる」
弓木くんに動きを封じられてしまった。
でも、このまんまじゃ。
吐息さえためらわれる距離。
口から心臓が飛び出てしまいそう。