弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「こっち向いてよ」
「え……? うん」
くるり、体を反転させて息をのむ。
そうだ、近かったんだった。
うかつに振り向くんじゃなかった、と後悔しつつ今さら背中を向けるのも不自然なので諦める。
「弓木くん……?」
「……」
「どうしたの? 弓木くん?」
何も言わない弓木くんに次第に不安になってきて「弓木くん、弓木くん」と連呼していると、ふいに弓木くんの手のひらがわたしの額をそっと撫でた。
それから、耳もとで。
「覚えてる? 言うこと1個聞いてくれるって約束」
「え……あ、うん。わたしの行きたかったカフェに付き合ってくれた代わりにってやつだよね」
デートのときの。
「今、それ使っていい?」
「え、今……っ?」
唐突だな。
今度は弓木くんの食べたいものをおごるくらいのことはしてあげようと思っていたのに。
ベッドの上でできることなんて、限られているんだし……。