弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


「……このか」


そっと、慣れない3文字で呼んでみる。


歴代の中瀬の彼氏が馴れ馴れしくその名を口にする度、羨ましくて仕方なかった。


中瀬は「そんなことでいいの?」って顔してたけどさ、俺にとっては喉から手が出るほど欲しいものだった。



親しげに下の名前で呼ぶ権利。
呼ばれる権利。

あわよくば、そのポジション……にはまだ手が届かないけど。



耳もとで名前を呼んでも、ぴくりとも反応しないあたり、中瀬は深い眠りに落ちているらしい。



「ほんとに寝たの」



つん、と誘われるがままに指先を中瀬の頬にしずめる。

無反応。


……つーか、ほっぺ、やわらか……。


まるくてふにふにしてて、やばい、一度触れると止めらんなくなる。

ずっと見ていたい、触ってたい。



むくむくと欲が膨らんでいく。
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