弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
中瀬の指が俺の目もとに触れる前に、きゅっと掴んで捕獲した。
「全然眠れなかったんだけど」
「え」
「このかのせいで」
「わたしのせいっ?! わ、わたし何かしてしまいましたか……。もしかして寝相がひどかったっ? それとも寝言? いびき? まさかよだれとか……」
まったく的外れなことを言いながら、中瀬の顔が青ざめていく。
なんでこの子はこんなに見飽きないんだろ。
「さあ?」
「さあ、って。はぐらかさないではっきり言ってよ……! 改善の余地がないから!」
「ふは、絶対言ってやんねーよ」
「なんで!?」
たとえ中瀬の寝相がひどくて、寝言もいびきもうるさくて、よだれをたらしていたとしても、それを知っているのは俺だけがいいと思うし。
実際の中瀬の寝顔は大人しくてかわいかったけど、それも俺だけが知っていたい、なんてこじらせた内心を見せるわけにもいかないし。
ポーカーフェイス、含みのある笑みを浮かべてやれば、中瀬は自分の寝相がそうとう酷かったと解釈したのか、しょぼんと叱られたわんこみたいにうなだれた。