弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
ちょうど口をつけていたウーロン茶が気管のヘンなところに入ってむせてしまう。
汚いなあ、なんてみかちゃんは呆れているけど、誰の発言のせいだと思ってるんだ。
「ちがうから……!」
「違うってどのあたりが? 弓木千隼の愛人────……むぐっ」
あわててカツ丼をすくって、みかちゃんの口に突っ込んだ。
「しぃー……っ!」
お願いだから、声のトーンを落としてほしい。
人がわんさかいる学食では、すぐに注目を集めてしまう。ましてや、千隼くんの話なんてすれば。
そうでなくても、みかちゃんは人目を引くのに。
────みかちゃんこと、小西 水奏ちゃん。
わたしの唯一無二の親友で、かつ、生まれもった美貌がゆえに、わたしの恋路に意図せずトラップを仕掛けていく宿敵でもある。
みかちゃんを好きになったんだ、紹介してくれって、ブリッジにされ踏み倒されたこと数知れず。
それでも、わたしはみかちゃんのことが大好きなの。
いざというときに頼れるしっかりもの。
たまに厳しいけれど、ばつぐんの包容力があって……。
それに、みかちゃん、ほんとうにかわいいしね。
女のわたしが見ても、うっかり惚れてしまいそうになるほどには美人なんだから。
わたしとみかちゃんが並んでいたら、そりゃあ、誰だってみかちゃんを選ぶ。
それが自然の摂理ってもの。
ともかく、わたしにとってみかちゃんは自慢の親友なのである。