弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
一応、気をつけていたはずだ。
勉強を教えてもらうのは、みんながいなくなったふたりきりの教室でか、空き教室に移動するかって。
千隼くんは、目立つから。
「見たから」
「みかちゃん見てたの!? 言ってよ!」
「いやー、じゃまするのも悪いかなって。ずいぶん仲良さそうだったし。あ、ついでに聞くけどテストはどうだったの」
「テストは大成功でしたけど……。120パーセント千隼くんのおかげさまで」
あれからみっちり1週間、勉強をみてもらって。
ビシバシしごいてもらったおかげで、あの悲惨な小テスト(6点)からは考えられないほどの高得点だった。
暑苦しい部屋にノブナガと閉じこめられる心配も、これでなくなったのは素直に嬉しい。
「へえ、よかったじゃん」
「うん、それはもう感謝感激雨あられといいますか」
「一晩中つきっきりで教えてもらったんでしょ?」
「へ」
「ウワサによると、テスト期間中にお泊まりしてたとか」
「ごふっ」
〜〜〜〜……!!
もう声にもならない。
動揺しまくるわたしをよそに、みかちゃんは「これ美味しいね」なんて言って丼からカツをひょいとつまんだ。
ちょっと待ってそれわたしのカツ。
が、しかし、今はカツの行方を気にしている場合ではない。