弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
聞き捨てならない。
ぎょっとしていると、弓木くんがいじわるく笑う。
「クマ、すごいことなってんね」
「……!」
あわてて、日本史の資料集をぱらぱら捲る。
現れた、埴輪の写真をまじまじ見つめて。
それから手鏡で自分の顔と見比べる。
たしかに、悔しいことに、似ていなくもない。
埴輪のぼっかりあいた目と、クマたっぷりのわたしの目はなんだか似ている。うう。
むくれつつ、縄文時代のページまで戻って、思う。
それでも土偶よりは、いくぶんかマシだよね、うん……!
「なんで寝不足?」
「そ、それは……」
弓木くんのせいだから……!
弓木くんが変なことを言うから、頭がいっぱいになって、眠れなくなったんだもん。
あれ……?
でも、弓木くんのあの発言って結局夢だったわけで……。
「内緒、だよ!」
「ふーん」
弓木くんが、頬杖をつく。
少し細めた目で、わたしを見つめて。
「俺のこと考えて眠れなかったのかと思ったのに、残念」