弓木くんはどうやらわたしが好きらしい



「ていうか壺とかお金とか、そういう話してないんだけど。頭弱いんじゃないの? ほんと、何ひとつ弓木くんと釣り合ってない」



クスクスと笑い声が上がる。

それは心地よいものじゃなくて。


たしかに “頭弱い” は図星だし納得できちゃうし……と自覚しているわたしにだって、さすがにわかる。

わたし、このひとたちに明らかな悪意を向けられている。



でもなんで?


わたし、このひとたちに恨まれるようなことなんて────あれ、今、“弓木くん” って聞こえたような。




「あんた、弓木くんと付き合ってるって本当?」

「あんたみたいな女がどーやってたぶらかしたわけ」




ナイフみたいな鋭い声を一斉に浴びせられる。


『“弓木ファンクラブ” はヤバい』



みかちゃんの言っていたことがようやく身に染みた。

“弓木ファンクラブ” だ、このひとたち。


きっと、いや、絶対。



千隼くんの人気をなめていたかも。

わたしは、もうちょっと警戒しておくべきだったかも……なんて後悔しても、あとの祭りなわけで。




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