弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


下校ラッシュの時刻、わらわらと昇降口に流れてくる生徒たち。


そうだこのなかの誰かに助けを求めれば、と声を上げようとした瞬間、チッとまた舌打ちされて手首をギュッと強く掴まれた。




「移動するから、大人しく着いてきな」




先輩、それも5人。
抵抗するほうが怖い。


たとえ抵抗したって意味ないくらい強引にずるずる引きずられて、あれよあれよという間に人気のない場所に拉致された。


ドンッと勢いをつけて肩をおされる。




「きゃ……っ!」



ガシャンと激しい音が校舎裏に響く。

背中を体育倉庫の扉に打ちつけた音。



痛い……。


よろめいたわたし姿に、きゃはは、とまた黄色い笑い声が上がって、不快がじわりと胸を侵食する。


わたしはドMじゃない。

そんな趣味はないし、暴力は反対だ。




「見たの。あんたが弓木くんと一緒にいるとこ」

「他にも見たって言ってる子いっぱいいた。ウワサも出回ってるし」



キッとにらまれる。



「あんた、弓木くんの何なの?」

「本当に付き合ってるわけ?」

「黙ってないでなんとか答えなよ」



先輩たちの剣幕にひるんでいると、それを無言の肯定だと解釈されてしまう。


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