弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「へ……」
それって、どういう意味。
「おい、まさか、忘れたなんて言うなよ」
「な、なにが」
「昨日のこと」
昨日のこと。
それは、ええと……。
「付き合ってみるってやつ」
「!」
「昨日から、中瀬は俺の彼女ってことになっただろ」
ガタンッ、思わず音を立てて勢いよく立ち上がる。
ホームルーム中、クラスのみんなの視線が一斉に集まったことなんて、わたしは気づかなかった。
「ゆ、夢じゃなかった!!!」
「中瀬、いきなりどうした? うるさいぞ、座れー」
はっ、と慌てて口をおさえるも時すでに遅し。
ノブナガの冷ややかな視線と、クラスのみんなのくすくす笑いを浴びながらそろそろ座る。
それから、いちばん鋭い視線を、となりの席からひしひしと感じた。
「ゆ、弓木くん」
「なに勝手に夢にしてくれてんの」