弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「だって!」
声を張り上げかけて、ノブナガの視線を感じる。
あわてて、ボリュームを落とした。
「ふつう、夢かと思うよ……」
「はー……」
弓木くんが深くため息をついた。
長い長いため息に、呆れられたのかもしれない、と思う。
「俺が昨日どんだけ────」
「へ……?」
「やっぱいい。どーせ、中瀬にはぴんと来ないだろうし」
なんの話だ。
「中瀬、信じらんないくらい鈍感だから」
「急にディスってくるね弓木くん……!」
もう、と頬をふくらませると。
弓木くんの指が、わたしの頬にふれて、ふに、とつまんだ。
ぐにー、とぎりぎり痛くない力で伸ばされる。
うう、伸びて戻らなくなったらどうしてくれる。
恨みをこめて、じ、と弓木くんを見つめると。
「……そーいうとこだろ」
「いま、なにか言いましたか?」
「なーんも」
わたしの頬を散々弄んだのち、ようやく手を離した弓木くんは、何を思ったか、俯いてゴツン、と額を机にぶつけた。
まあまあな衝撃音にわたしがびっくりする。
な、なんだ今のは。
思わず弓木くんを二度見すれば、さらりと流れ落ちたつやつやキューティクルが眩しい黒髪の隙間からのぞく弓木くんの横顔は、むすっと不満足げ。
なんだか、拗ねてるみたい。