弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
おでこを机にくっつけたまま、弓木くんがちらり、とわたしを見る。視線でわたしを捕まえて。
「で、いい加減、思い出した?」
「え?」
「昨日のこと」
「あ……うん。夢じゃない、んだよね?」
「夢なわけあるか」
どことなく弓木くんが拗ねて見えるのは、わたしが夢とうつつもわからくなるくらいポンコツだから、そろそろ愛想つかしているのかもしれない。
でも、そのわりには。
「カノジョ、なんだろ。俺の」
「……!」
「仮だけど」
わたしとの恋人契約なんて、持ちかけてくるし……。
ぽやぽやと考えごとをしていると、弓木くんが目をすがめる。
それから。
「中瀬、放課後、ヒマ?」
「え? ひま、だけど……」
「デートするか」
「デ!? ……っ」
目ん玉飛び出るかと思った。
びっくり叫び声を上げそうになって、あわてて両手で口をおさえる。ぎりぎりのところで教室中に叫び声が響きわたるのを阻止成功。