弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「っ、とりあえず名乗ってくれませんか」
ふはは、と肩を揺らす度、彼からは甘い香りが漂ってくる。
香水かな、いい匂いだけど……。
大人っぽくて危うい気配がするのは、どうしてだろう。
「逢見 俐央です。はじめましてー」
「逢見、くん」
逢見 俐央くん。
名前は聞いたことがあった。
ええと、どこで────ああ、そうだ、みかちゃん情報だ。
千隼くんが “誰とも付き合わない” ことで有名なのに対して、“誰とでもすぐに付き合う” で有名な男の子がいるって。
来る者拒まず去るもの追わず。
だけど、それでもいいからって人気が絶えないらしい。
『このはだめだよ、近づかない方がいい。あんた惚れっぽいから、逢見俐央なんかに惚れたら本格的に抜け出せなくなるよ』
なあんて、入学したばかりのときに、みかちゃんに口すっぱく忠告されたのが記憶の片隅に残っている。
なんてこった、やっぱり危険人物じゃないですかい。