弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「5組の子? 俺4組だから、隣のクラスだねー」
「は、はあ」
「よろしくねー」
「!」
するり、当たり前のように手のひらにふれられる。
交わしたのはただの握手、なんだけど……なんだか。
なんだか、距離が近い、ような。
「さっきからずっとそこに立ってるけど、教室、戻らないの?」
「や……入りづらくて」
「なんでー? 中、取りこみ中?」
「ううん、ええと、話が盛り上がってそうだし乱入するのもなあって、待ってるの」
「へー」
逢見くんがわたしの背後から、扉の隙間をのぞきこむ。
「千隼じゃん。ふーん」
“千隼” って呼んだ。親しげに。
びっくりして、思わず逢見くんを見上げる。
「逢見くんって、千隼くんの友だちなのっ?」
「まさか」
まさかなんだ。