弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


「な、な、な……っ」



もはや声にならない。

はくはくと口を動かすだけのわたしの背後で、ガラガラッと音がして、次の瞬間。



「────何してんの」




目の前にすとん、と手刀が落ちた。

容赦ないチョップを受けて、逢見くんの手はわたしの顎から離れる。


千隼くん、いつの間に。
驚き目を見開くわたし。


一方で逢見くんは、わかりやすく “興が醒めた” って顔をして。




「じゃーね。このちゃん、またねー」




ひらひらと手を振って、あっさり背を向ける。
嵐のように去っていってしまった。



「逢見と何話してたんだよ。つーか、このかと逢見って接点あった?」



廊下に残された千隼くんとわたし。

千隼くんは怪訝な顔をしている。



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