弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


しかし、あからさまに挙動がおかしいわたしを、ノブナガがロックオンしている。

だめだ、ただでさえ成績はいつも赤すれすれの綱渡り状態なのに、これ以上目をつけられては────……なむなむ、心頭滅却すれば火もまた……



涼しくない!!!


冷静になれるはずもなく、弓木くんの袖をつんつんと引く。


すると弓木くんはこちらに体を傾けて耳を寄せてくれたので。



「デデデ、デートって、なに……っ?」

「デートはデートだろ」

「そ、そういうことを聞いてるんじゃなくてですね……!」



あんぱんはあんぱんだろ、みたいなことを言わないでほしい。

あんこが中に入ったパンですって言ってくれないとわたしにはわかりません。




「てか、中瀬の方が詳しいんじゃない?」

「へ?」

「昨日あれだけ豪語してたじゃん。俺より恋愛経験ほーふだって」

「そんなこと言ってな────」



いや、言ったな。
言ったな!?



でもあれは売り言葉に買い言葉というやつだ。

ううん、思い出せ。
これまでお付き合いしたひととデートのひとつやふたつくらいはしたことあるはず────。



そう、たとえば待ち合わせ時刻の30分前に駅について、寒空の下そわそわ待っていて……待てど暮らせど来なくて、ついに連絡もなしにドタキャンされたとか。

たとえば、おしゃれなカフェに行って、可愛いバイトの店員さんに目移りされてしまい、そのまま別れを切り出されたとか。



はて、デート、とは?







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