弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


「っ、だ、だめなの! 千隼くんはなんか、だめ!」



このままだと、心臓が口から飛び出してしまう。

落ちつけ落ちつけと念じても、ドキドキは増すばかりで。



だめだ、ほんとに、もう。

千隼くんの袖を必死につかんで、くいくい引く。

上目づかいに見つめれば。




「……この生意気」



じとっとした瞳に見下ろされて、それから千隼くんの手がぱっと離れた。


ほっと胸をなでおろす。

それでも余韻でまだ心臓がうるさいけれど。



「とにかく俺が言いたいのは、気をつけて自衛して、ってこと」

「自衛……?」

「逢見みたいな男は特に。ほんと……駄目だから」



仏頂面の千隼くん。


千隼くんの言いたいことはわかったような、わからないよな……曖昧なままでこくこく頷くと、千隼くんはまだなにか言いたげな顔をしていたけれどそれを飲みこんで。



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