弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


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その翌日からだった。
わたしの穏やかな日常が乱されはじめたのは。

……というのも。




「あ、このちゃんだー。今日もよく会うねー」




移動教室の途中。

渡り廊下の角を曲がった瞬間、現れた姿に「またか」とうなだれた。




「待ち伏せしてる、のまちがいだよねっ?」

「えー人聞き悪いなー、ほんと、たまたま俺の行く先にこのちゃんが現れるだけだって。ほら、俺たち運命なんじゃない?」




逢見くんがうさんくさい笑みを浮かべる。



そう、なぜか。

わたしはここ数日の間ずっと、逢見くんに付きまとわれている。



朝登校してきたときには下駄箱でばったり、そのあとは教室までなぜか着いてきて、休み時間ピロティの自販機に飲みものを買いに行くと、影からひょっこり。



最初はほんとに偶然だと思っていたけれど、さすがに数日も続けば、逢見くんを疑う気持ちもふくらんでくるわけで……。





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