弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
それに、ずっとスルーしていたけれど。
「“このちゃん” って……」
さらっと呼んでいるけれど、出会ったばかりでまだお互いなんにも知らないのに。
「俺のこと “俐央” って呼んでくれてもいいんだよ?」
「……!」
みかちゃん情報に違わない。
チャラ……! ノリが軽すぎてついていけない。
「けっこうです……!」
「千隼のことは名前で呼ぶのに?」
「っ、千隼くんと逢見くんは別だもん……!」
「ふーん?」
わたしの返答に、含み笑いした逢見くんは。
わたしの手から生物の教科書をとつぜん奪った。
「な、なんで取るのっ? 返して……!」
次、生物の授業なのに。
ていうか、今から生物室に向かう途中だし、このままだと遅刻してしまう。
逢見くんに足止めされている場合じゃない。