弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


「約束してくれるなら返してあげるー」

「約束?」

「うん。このちゃんが俺の電話、無視しないってね」

「っ、それは」




逢見くんがぐーんと手を伸ばして、生物の教科書を頭の上に掲げる。

うう、身長差を利用するなんてずるい。


ぴょんぴょん飛び跳ねても、指先1本かすりすらしない。




そんな逢見くんがとつぜんわたしに構いはじめた数日前から、千隼くんの機嫌がすこぶる悪いの。


ううん、実際の千隼くんは “いつも通り” を装ってはいるんだけど────最近ずっとそばにいるわたしにはわかる。


逢見くんが現れる度、逢見くんからわたしに着信がある度、千隼くんをまとうどす黒いオーラ。



もしかして、千隼くんと逢見くんってすこぶる相性が悪いのではないかと思ったのである。




「ていうかさー、なんで無視すんの? 無視しないでって言ったじゃん。なのに、メッセも電話も全然繋がんないし」

「だって、冗談だと思うよ、ふつう」

「それにしてもでしょー」

「っ、それは千隼くんが……」

「え、なんでここで千隼が出てくるわけ」



怪訝な顔をする逢見くん。




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