弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「えーっと……」
思い返せば、まともにデートできたことがない、のかもしれない。
思い返せば返すほど、切ない思い出がよみがえってきて頭を抱えたくなった。
けれどここで素直に弓木くんに「じつはまともなデートをしたことがない」と白状してしまうのは、なんだか……なんだか……、わたしにもプライドってものが!
「デデッ、デートくらい任せなっ! お安い御用で!」
「声裏返ってない?」
「そ、ソンナコトナイヨ」
「ふーん。じゃあ、余裕だってことだ」
「えっ」
「放課後。行きたいとこ、考えといてね」
「えっ、ちょ!」
ちょっと弓木くん。
あわてて呼びかけるけれど、弓木くんはしれっとした顔でノブナガの話を聞くモードに入ってしまった。
どうやら、弓木くんと放課後デートするのは決定事項らしい。
うらめしく弓木くんをちらりと横目で見ると、弓木くんは舌をべ、と出してきた。
ほら、やっぱりからかってるんだ。
「む、むかつく……!!」
「中瀬、これ以上ホームルームの邪魔するなら、平常点ゼロなー」
「ひっ、どうかそれだけはご勘弁を!!」
弓木くんのからかうような笑みと、ノブナガの冷ややかな視線に挟まれて、わたしはもうなにがなんやらであった。