弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
逢見くんにああ言ってしまった以上、みかちゃんと合流してアリバイ工作するしかない。
仕方ない、学食のプリンでみかちゃんを買収しよう。
のろのろと立ち上がって、教室を出ようとすると。
「……っ?」
突然、手のひらを捕まえられた。
隣の席からまっすぐ伸びてきた腕が、わたしを引き止めるようにきゅっと。
だけど、それはどこか弱々しく。
「千隼くん?」
こて、と首を傾げると、千隼くんはじっとわたしを見つめて、押し殺したような声で。
「逢見のところ、行くの」
「え……? ううん、行かないよ。みかちゃんとお昼食べるだけ!」
すると、千隼くんははっと我に返ったように手を離す。
それからちょっと困ったような顔をして、視線をそらした。
「……ならいいけど」