弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「ちょっ、逢見くっ?! なんでここに────」
「なんでって。このちゃんが俺の誘いを断るから、ひとり寂しく学食で飯でも食おーと思って」
神出鬼没にもほどがある。
みかちゃんは状況が掴めないのか、口をあんぐり開けたままわたしと逢見くんを見比べていた。
「ってなわけで、このちゃん連行しまーす。みかちゃんだっけ? ごめんねー、このちゃん借りるねー」
「は、はいっ?!」
驚いている暇もない。
ぐいと腕をひかれて立ち上がらされて。
一瞬後にはもう、みかちゃんの前から連れ去られてしまった。
ていうか、みかちゃんも黙ってないで助けてよお……!
「はい、どーぞ、このちゃんの席」
「ありがとう……」
連れて行かれたのは学食の隅の席。
レディファースト的に椅子をひいて促されて、反射的にお礼を言いつつ座ると。
「ふはは、強引に連れてきたのにお礼言うんだ?」
そうだった。
むっと頬を膨らませると、逢見くんはくすくすと肩を揺らしながら目の前の席に腰かける。
そして、何ごともなかったように味噌ラーメンをすすりはじめた。
お箸の持ち方が綺麗。
なんてぼんやり考えて、それからはっと我に返る。