弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
こんないっぱいいっぱいの状態で、弓木くんとどんな顔でどんな話をしたらいいか、わかんないよ。かくして、逃げに走ったのである。
ただし、弓木くんの方が上手で。
教室を出た瞬間、そこで待ちかまえていた弓木くんに捕まった。そして渡り廊下まで連行されて、今、背中には壁、顔の両側には弓木くんの腕。
追いつめられて逃げ場がない。
そして、近い……!
「デートくらいお安い御用だって言ってたじゃん」
「いっ、言いましたけど……」
「デートのプラン、考えてくれないんだ? 俺より恋愛経験ほーふな先輩なのに?」
ぎくり。
そう、わたしは今、プレッシャーに負けているのだ。
“デートなんてお安い御用” とかいう、とんでもない見栄を張ってしまったせいで。
理想のデートなんか、わたしに、わかるはずもないのに……!
「ほ、ほんとに……デートするの?」
「……そんなに嫌?」
「イヤ、というか」
ううう、と逡巡する。
言うべきか、言うまいか。
でも隠したって、どうせいつか弓木くんにはバレてしまう。
だって、弓木くんってすごく鋭い。わたしの失恋を毎回嗅ぎつけてくるくらいなんだから。