弓木くんはどうやらわたしが好きらしい



どこまでも準備万端な千隼くんが、ケーキに立てたローソクに火を灯してくれて、そこでやっと嬉しさが驚きに追いついた。



いつから、考えてくれていたんだろう。

予約してくれたんだよね、このかわいいケーキ。



千隼くん自ら、ケーキ屋さんに出向いて……千隼くん、そういうの「めんどくさい」って嫌がりそうなのに。


サプライズとか、そういうの、きっと得意じゃないよね?



想像すると、胸がきゅーんと甘く狭くなる。




ローソクの火を吹き消して、さあケーキを食べようとフォークを手にとったわたしに、千隼くんは何かを差し出した。




「ん」

「箱……?」




開けろ、ってことかな。

おそるおそる手を伸ばして、箱にかけられていた淡いピンクのリボンをほどく。


ぱかっと蓋を開けて、現れたものに目を見開いた。



「これ……」

「プレゼント。もらってくれる?」

「どうして、わかったのっ?」



箱のなかにおさめられていたのは、パスケース。



「今日の朝、ちょうど壊れちゃったばかりで、新しく買い直さなきゃって、思ってたところ、なのに……」
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