弓木くんはどうやらわたしが好きらしい



「ふは、そこまで狙ったわけじゃねーよ。前から、物持ちいいなとは思ってたけど」



タイミングは偶然だとしても、わたしがパスケースを使い古していたことには気づいてたってことだよね。



しかも、すっごくかわいいうさぎ形の。

わたしが愛してやまない超高額うさぎのデザインの。




こんなの、畏れ多くて受け取れない。

でも、わたしのためだけに用意してくれたものだから、受け取るしかない。



嬉しい、なんて言葉じゃおさまらないの。

朝ちょっとブルーになった気持ちまでなかったことになってしまうほどで、思わず頬をつねってみた。




「っ、痛い」

「何してんだよ」

「だって……こんなの、夢じゃなきゃ、へんだよ」



でも、夢じゃないみたいだ。
目の前にいるのは現実の千隼くん。




「どうして……ここまでしてくれるのっ?」




嬉しいことばかり。
喜ぶようなことばかり。

わたしにとって、しあわせなことばかりで満たされていく。




「言っただろ。“幸せな恋を教えてあげる” って」

「……!」



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