弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「ていうか、恋人同士ならこれくらいするのが普通じゃねーの」
恋人同士なら。
だけど、わたしたちは、ほんとうの恋人同士じゃない。
お試しで一緒にいるだけの、仮の関係。
「……ぁ」
ずっと、この時間が続くわけじゃない。
これは “契約” なんだから、いつか終わらせなきゃならない。
千隼くんがわたしにくれる、恋人 “らしい” 経験もぜんぶ────契約の上で成り立っていることだから、契約解除すれば、なくなってしまう。
なんで、こんなタイミングで思い出してしまったの。
“千隼くんは、ずっとわたしのそばにいてくれるわけじゃない” って、最初からわかりきっていたようなこと。
契約は、シンデレラにとっての魔法と同じ。
午前0時になって、とけてしまえば、すべて元通りでなにも残らない。
「おい、なに固まってんだよ」
「……」