弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「このか?」
「や、ううん! 何でもないっ、ケーキ食べよ! おいしそう……!」
ショートケーキは、真っ先にいちごを食べる派だ。
フォークで突き刺して、「んん」と生クリームつきのいちごを口いっぱいに頬ばれば、「リスみてー」と千隼くんが目を細めて笑う。
ずっと、この時間が続けばいいのに。
ドキドキしてそわそわして。
なのに、居心地がよくて。
隣にいると楽しくて、しあわせで。
良いことも悪いこともなんでも、いちばんに話したい、聞いてほしい。
千隼くんのことももっと知りたい、近づきたい。
ずっと、そばにいてほしい。
わたしが「おしまい」って言わなかったら、ずっとこのままの時間が続くのかな、なんて夢を見てしまうほどには────
「千隼くん」
「うん?」
「…………っ、ケーキ、すごくおいしい」
わたし、千隼くんのことを、好きになってしまった。
シンデレラ、魔法がとけても唯一残ったガラスの靴。
わたしにとってのガラスの靴は、千隼くんへの恋心、らしい。