弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


ちら、と逢見くんを見上げる。

すると逢見くんは、こく、と喉を上下に動かした。




「……なんでそんなこと聞くの?」

「きょ、興味本位といいますか」




逢見くんは、すう、と息を吸って、そして。




「いるよ」

「えっ、ほんとう?」




思わず声を弾ませたわたしに、逢見くんは首を傾げる。




「なんでそんなに嬉しそうなの」

「わたしも好きなひとがいて! といっても最近気づいたばっかりなんだけど……っ」




わたしの言葉に、逢見くんが息をのんで目を見開いたことには気がつかなかった。




「……へー、このちゃん、好きなやつ、いるんだ」

「うん。それで……、いつも通りでいられなくて」

「そわそわしてるってこと?」




そわそわ、心が飛び跳ねるような心地。
それも、あるけれど。

今、わたしの頭を占めているのは。



「……っ、どうすればいいか、わかんなくなっちゃった……」



困惑とも混乱とも言いがたい。
不安と呼ぶのがいちばん近いかもしれない。




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