弓木くんはどうやらわたしが好きらしい



「……意外だね」

「意外?」


「このちゃんって、もっと猪突猛進かと思ってた。当たって砕けてでも、ばか正直に好き全開で体当たりしてくのかと思ったけど、意外と慎重なんだ」


「たしかに、そうかも……」

「ふはは、納得するんだそこで」




だって、そうだよ。


今まで思い返してみれば、わたしはいつも、不毛な恋にうっかり落ちて、不毛なまま突撃して、撃沈して……って繰り返していたのに。


千隼くんに限って、それができない。

いつもはあんなに無謀に突撃するのに、それが怖くて仕方なくて、できない。




「……っ」




──── “当たって砕けても” 。


ああ、そうか。
わたし、砕けるのが、怖いんだ。

どうして不安になるのか、逢見くんの言葉で気づいた。



千隼くんとの今までを壊したくない。


もしも砕けてしまうくらいなら、このままでいいって思ってしまうくらい、千隼くんが隣にいる日々はわたしのなかで大きなものになっていた。

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