弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


「逢見くんなら……どうする?」

「俺なら?」



「たとえば、逢見くんの好きなひとは、逢見くんにとってもともと近い場所にいるひとだったとして、好きって言っちゃったら離れて行ってしまうかもしれなくて……、そういうとき、どうする?」

「俺は……」




逢見くんは、なぜかわたしをじっと見つめた。




「……さあ、どーだろ」




どーだろ、って。

参考にするしないの以前に答えになっていない。聞く相手を間違えたか、と回れ右しようとして、逢見くんに捕まった。


ぐっと肩を掴まれる。




「千隼のこと、好きになっちゃった?」

「!」

「このちゃんが好きなのは、千隼でしょ」

「ななななんで、わか……っ」




あわあわするわたし。

肩を取り押さえたままの逢見くんは、ふっと口角を上げる。


その表情はどこか切なげで違和感を覚えた。



「ばればれだから」

「うそっ!?」


「いつか気づいちゃうとは思ってたけど、案外早かったなー。あーあ、あいつのこと考えて、そんなかわいー顔しちゃうんだ」


「っ、からかわないでっ」

「からかってない」

「面白がってるでしょ!?」




む、と頬をふくらませると逢見くんはすっと目を細める。

それから真剣な顔をして。



「面白くねーから、なんにも」



はー……と深い深い息をついた。



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