弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
覚悟を決めて、千隼くんをまっすぐ見つめる。
「千隼くん、終わりにしよう」
「……は」
「仮の恋人契約、クーリング・オフを申し出ます!」
わたしの言葉を聞くなり、千隼くんは、ぴしりと固まってしまった。
「すごく、楽しかったの……。わたし、千隼くんも知ってのとおり、恋愛でいい思いしたことがなくて、だからはじめてのことだらけで、みんなが味わっているような恋人同士でするしあわせなこと、ぜんぶ、千隼くんに教えてもらって……ほんとに、楽しくて、いつのまにか、ずっとこのままがいいな、とか甘えたこと考えちゃってて」
ありがとう、と伝えると千隼くんはきゅっと拳を握って、視線をそらして。
「だったらまだ────」
「ううん」
もう続けられないよ、と “終わり” を口にする。
これで、ほんとうに終わってしまうかもしれない。
いやだな、ほんとうは……。
ほんとうは、まだ、黙ったまま、千隼くんの隣にいたいけれど。
「だって、好きになっちゃったんだもん……っ」