弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


耳元で囁かれて、体温がぶわっと上がった。
こくこくと頷きながら答える。



「わざわざ嘘つくために、こんなところ、来ない……」

「俺のこと、追いかけてきたの?」

「だって、千隼くんが逃げるからっ」

「かわいい」

「……へ」



ふっと自然に唇が重なりかけて、慌てて制止する。




「待っ、て! 千隼くんは?」

「は? なにが」

「千隼くんの気持ちをちゃんと教えてほし……っ」




涙ながらに訴えると、千隼くんはぱちぱちと瞬きをする。




「ずっと言ってんじゃん、まだわかんねえの?」

「……え」

「俺がどんだけこのかのこと好きか、まだわかんない?」




< 241 / 265 >

この作品をシェア

pagetop