弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
『あのね、今から数学の課題しようと思うんだけど、その間電話繋いでてもいい……?』
「いーよ」
『へへ……ありがとー』
電話越しに聞くこのかの声は、いつもより耳にくすぐったい。
登下校も一緒だし、クラスも一緒で隣の席。
必然的に顔を合わせるわけで、今まで電話なんてしたことなかったけれど、このかがとつぜん「千隼くんと電話で喋ってみたいなー」とか言い出したから。
家に帰って繋いでみたわけだけど。
悪くない……ていうか、むしろ、俺の方がクセになりそう。
つうか、声聞くと顔が見たくなる。
ついさっきまで一緒にいたのにほんとうにおかしな話だけど、ふつうに、足りない。
日に日に欲深くなっていくのが自分でわかる。
このかが俺のこと好きだってだけで、もう十分すぎるはずだったのに……とふと視線を向けた先でハニワのぬいぐるみと目が合った。このかが取ってくれたやつ。
────あのときは、このかが俺のことを本気で好きになってくれるなんて、思えなかった。好きになれよ、とは思っていたけれど。