弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


よくわからないまま、しぱしぱ瞬きを繰り返す────とそのタイミングで。


ぐーぎゅるぎゅる。



「……!」

「……今の、中瀬?」

「やっ、やめて忘れて、一刻も早く忘れて聞かなかったことにしてくださいな……!!」



盛大なお腹の音に、かああ、と顔中熱くなる。
は、恥ずかしい。

仮にも“デート”中だというのに。

こういうところがだめなんだ、わたしは……と深刻に落ちこんでいると。



「ふ、はは、なに今の」

「っ、笑わないでよお……っ」



半べそ状態のわたしに、弓木くんは肩をふるふる震わせる。

笑わないでって言ってるのに……!


さすがにむっと反抗しようと口を開きかけた、けれど。



「ほんと、かわいーね」

「……?!」

「中瀬、なんか食いたいものある?」



え、今、なんかさらっと弓木くんが発したとは思えないせりふが聞こえたような気がしたのだけれど……気のせいですか。


あまりにさらっとしすぎていて、やっぱり、気のせいだったのかも。

気を取り直してあたりを見回す、食べたいもの、食べたいもの……。




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