弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
むんっと小さく気合いを入れて、改めて千隼くんの姿をまじまじと見つめる。
「か、かっこいい……」
万人受けする美しさとはこのことか、と思う。
誰もが認める端正なお顔に、衣装の燕尾服が非常によくお似合いになられている。
教室中から視線をひしひしと感じるのはたぶん気のせいじゃない。
ほんと、かっこいいよね、千隼くん。
知ってるし、それはもうあたりまえのことでもあるんだけど……でも、とちらり、かすめた不安。
「このか?」
と、目ざとく気づいて首を傾げた千隼くんの袖をつんと引く。
「あの、あのね」
「……?」
「あんまり……女の子に囲まれないでね……っ? モテるのは仕方ないことだけど、でも、……」
「それ、やきもち妬いてんの」
「!」
図星をさされてぴくっと背筋が伸びる。
う、と言葉につまると千隼くんは、とびきり嬉しそうに口角を上げた。