弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「……あ」
目についたのはピンクのネオンがぴかぴか輝いているお店。
SNSで最近よく見かける、話題の韓国風カフェで、同じ年くらいの女の子がずらっと並んでいた。
き、気になる……!
でも、弓木くんはきっと興味ないよね、こういうの。
わたしの興味だけで付き合わせるのも、行列に並んでもらうのも気が引けるし……うう。
やっぱり今回は他のお店にしたほうが────。
「並ぶか」
「へっ?」
「あのカフェ、気になってるだろ」
「な、なんで……」
なんでわかるの。
まだ、わたし、なにも言ってない。
「顔に書いてある」
「顔……っ?!」
慌ててぺたぺたと顔に触れると、弓木くんは「くはっ」と声を上げて笑った。いい笑顔。
「中瀬はわかりやすいんだよ」
「そう……かな?」
「うん」
頷いた弓木くんは、あっさり女の子の行列のうしろに並ぼうとする。
慌ててわたしは弓木くんのシャツの裾をひいた。
「うおっ、中瀬、どした?」
バランスを崩しかけた弓木くん。
不思議そうにわたしを見つめる。
「いいの……?」
「え、なにが?」
「わたしの行きたいお店に付き合ってもらって」
「はは、なに、そんなこと気にしてんの? いーんだよ、今日は中瀬の行きたいとこに行きたいの。それに俺的には今後の参考にもなるし」
今後の参考……はよくわからないけれど。
「でも」
やっぱり申し訳なさが勝つというか。
フェアじゃないというか。
困るわたしに、弓木くんはまた笑う。
「そんな気にするんだったら、これは貸し1ってことで」
「貸し?」
「代わりに、今度、俺の言うこと1個聞いてよ」
「えっ」
「それでチャラな」
結局そのまま、弓木くんは嫌がる素振りひとつもなく、あの長い行列に一緒に並んでくれたの。