弓木くんはどうやらわたしが好きらしい



ずっと一緒でいるだけじゃ足りないわがままでごめんなさい。

重くてごめんなさい。


でも、お願いだから。

千隼くんに、ずっとわたしのことを好きでいてほしいの。




きゅ、と袖を握って懇願するわたしに、千隼くんは笑う。




「そんなことでいいのかよ」




当たり前のように笑うから、幸せすぎてどうしようもなくてほろっと涙がこぼれてしまう。



好きな人が、自分を好きでいてくれる奇跡を、それがこんなにしあわせだってことを、幸せな恋を、わたしは千隼くんにぜんぶ教えてもらった。



こらえきれず、ぼろぼろと流れる涙を千隼くんは焦ったように拭う。




「おい、泣くなって。……泣いたらだめじゃん。俺を好きになれば泣かずにすむって豪語したのに、嘘になるだろ」




拗ねたように言う千隼くんにちいさく笑う。



だけど、あのときぽろぽろこぼした涙の種類とはぜんぜん違うんだよ。幸せすぎて泣くこともあるんだってことを、千隼くんはたぶん知らない。





< 262 / 265 >

この作品をシェア

pagetop