弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


𓐍
𓏸



「……!」

「中瀬、おいし?」



いちごが丸ごとひとつ挟まった、分厚いマカロン───じゃない、トゥンカロン(と呼ぶらしい)をかじったわたし。

ぱあっと目を輝かせたわたしに、弓木くんは首を傾げた。



「美味しい……!」



見た目がとってもかわいくて、それだけで心はもう満足だったのだけれど、いざ食べてみると甘くておいしくて、舌も満足。


ふわふわのクリームが乗ったいちごミルクを飲んでみると、こっちもおいしい。


幸せで、頬をゆるゆる緩めていると。




「よかった」




ふっと口角を上げる弓木くん。



なんだか、わたしの知っている弓木くんじゃないみたいだ。

弓木くんはもっと、こう、いじわるでひと言多くて、正論モンスター、なのに。



文句ひとつ言わずに行列に並んでくれたり、さっき注文するときだってそう、わたしがどちらにしようか迷っていたメニューをさらっと2つとも頼んでくれたりして。



もしかして、今目の前にいる弓木くんは弓木くんじゃない?


弓木くんの形をした、ほかの何か……?

と弓木くん(の形をしたなにか)をまじまじと見つめながら、SFチックなことを考えていると。



「これ、飲みたいの?」

「へっ?!」





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