弓木くんはどうやらわたしが好きらしい

𓐍
𓏸


スイーツをすっかり完食して、カフェを出て。



「中瀬、ほかに行きたいところ、ないの?」と弓木くんが聞いてくれたのだけれど、特に思いつかなかったから、ぶらぶら商店街を歩いて回ることにした。


もっと弓木くんに振り回されると思ったから、いつになく優しい弓木くんに驚いている。

なにか、企んでるんじゃないかって。



“はぐれ防止” のため、手を繋がれたまま、歩いていると。




「……あ」



弓木くんの足がふいに止まる。

手を繋いでいたせいで、「わわっ」と前につんのめった。



「弓木くん……? なにか気になるもの、あった?」

「いや、別に」

「なんで隠すのっ、怪しい……!」



水くさいなあ、と弓木くんの視線の先を追うと、そこにあるのはゲームセンター。



「もしかして、弓木くん、あれ欲しいの?」



ショーウィンドウにぎっしり並んでいるのは、ハニワのぬいぐるみ。

薄茶色のクッションに上下に曲がった腕と、ぼっかり空いた目がついている。


どこがかわいいのか、まったくわからないけれど。




「見てただけ」

「見てたってことは気になるんだよねっ?」

「……」




なぜか、気まずそうな弓木くん。

そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。

たしかに、ハニワが好きなんて、なかなか独特な趣味だとは思うけれど……。



「ねっ、せっかくだからゲーセン行こうよっ」

「え」

「わたし、UFOキャッチャー得意なんだ!」




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