弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
ぐいぐい弓木くんの腕をひいて、ゲームセンターに入店。
ハニワのぬいぐるみのUFOキャッチャーの前に陣取る。
「見ててね、弓木くん! わたし、すごいんだから!」
小銭をマシンに投入する。
顔も勉強もスポーツも平々凡々。
そんなわたし、中瀬このかの唯一の特技は、UFOキャッチャーなのである。
小学生の頃、どうしても欲しいうさぎのぬいぐるみのために、パパにせがんで何度も挑戦していたら、コツを掴んで得意になったの。
あのとき最終的にゲットした超高額(きっと元値の数倍)ぬいぐるみは今でも部屋のベッドの上にいる。
さあ、弓木千隼くんよ。
わたしの華麗なUFOキャッチャーさばきに、ぎゃふんと言うがいい。
ふふん、と得意げにレバーを握る。
目測でハニワとアームの距離をはかって────よおし、この距離なら横に3秒、奥に1.5秒。体内時計で正確にカウントして、レバーを動かせば、ほらね!
アームがハニワの腕にちょうど引っかかって、ぬいぐるみが持ち上がって……取り出し口に真っ逆さまに落ちてくる。
大成功。
思わずぴょんと飛び跳ねた。
「ねっ、見てた!? 弓木くんっ」
「……びっくりした。まじで、得意なんだ?」
「すごいでしょっ?!」
「ふは、たしかに、すげえな」
「地道にこつこつ練習して、アームの動きとぬいぐるみの位置を計算して、習得したんだよ。たゆまぬ努力のたまものなの」
「そのたゆまぬ努力、もっとほかに使い道なかった?」
「もうっ、弓木くん相変わらずひとこと多いねっ?!」
む、と頬を膨らませつつ、取り出し口からハニワを引きずり出す。
やっぱり、近くで見ても良さはあんまりわからない。
弓木くんはこのハニワのどこに魅力を見出したのだろう……と不思議に思いつつ。
「はい、弓木くん」