弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「え」
「え、じゃないよ。それ、弓木くんが欲しかったんでしょ?」
「くれるんだ?」
「そのために取ったんだもん」
さっき、カフェでおごってくれたお礼がしたかったというのもある。
でも、冷静に考えると、弓木くんはぬいぐるみなんて要らないかもしれない。
弓木くんがぬいぐるみを持っているところはあまり想像できないし……このハニワ、意外と大きいし、迷惑だったかも、と思いかけたとき。
「ありがと。大切にする」
「へっ?」
「嬉しい」
私からすんなりぬいぐるみを受けとった弓木くんは、ふわりと柔らかく笑った。
それは、あまりにも純粋無垢な笑顔で。
あれ……? おかしいな。
てっきり 「要らない」 とか言われて、突き返されるかもしれないって、思ってたのに……。
ほんとうに大切そうにぬいぐるみを抱えて、さらにはハニワの頭をそっと撫でたりなんかして。
弓木くんってば、そんなに……そんなに好きなのか、ハニワのこと。
「あのう、つかぬことをお伺いするのですが」
「なに?」
「そのハニワの……どこがそんなに好きなの? わたしには、残念ながら、ぜんぜん魅力がわからないんだけど……」
「内緒」
「えっ」
「中瀬には絶対言ってやらない」
「なんで!? いじわる……!わたしが取ってあげたのに!」
「はは」