弓木くんはどうやらわたしが好きらしい

「へっ?! は、早くないっ?!」

「中瀬の見てたら、コツ掴んだ」

「やめてよ! わたしの唯一の特技なのに……!」

「はは、ドンマイ」



まさかの、1発チャレンジでうさぎを手に入れた弓木くん。

UFOキャッチャーだけは弓木くんに勝てると思っていたのに、あっさり攻略されてしまった。

天はこのひとに二物も三物も与えすぎだよ。


なんて、むくれていると。



「はい」

「へ……」



うさぎをぽんと手渡される。

反射で受けとってしまったけれど、1秒遅れて目を見開く。



「えっ? なんで、うさぎ……」

「中瀬にあげる。物欲しそうな顔でそれ、見てただろ」

「エスパー……? 弓木くんって、もしかして心読めるのっ?」

「読めねえよ、ばあか」



ばあか、の響きがものすごく優しい。



「もらって、いいの……?」

「ハニワのお返しだから」



それを言うなら、ハニワだってカフェのお返しなのに。

おろおろしながら、うさぎをぎゅっと抱きしめる。


こんなに至れり尽くせりでいいのかな。
でも……嬉しい。


思わず頬が緩む。



「えへへ、ありがとう、弓木くん」



ふにゃっと笑って弓木くんを見上げると、弓木くんは、ちょっと息をのんで、それから少し頬を赤く染めた。



「……っ、べつに、これくらい普通。デートなんだから」





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