弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「テメエ、何のつもりで脛蹴りやが────」
「お前、黙って聞いてれば、勘違いも甚だしいんだけど」
ユウジくんが物凄い剣幕で睨みつけているのはわたし……じゃなくて、わたしの隣の、弓木くん。
何事かと思って、弓木くんをちらりと見上げると、そこにはぞっとするくらい冷たい顔の弓木くんがいた。
弓木くんはいじわるだけど、でも、こんな顔は一度も見たことがない。
「中瀬は俺のこと好きとかじゃねーよ。むしろ、お前のことずっとちゃんと一途に考えてた。そんなことにも気づかないなんて、お前、憐れだな」
「は?」
「中瀬と俺は────俺が、一方的にこの子のことが好きなだけ」
弓木くんが、怒ってる。
怒ってるってわかるくらい、怒ってる。
「つか、昨日の今日で、ってどっちがだよ。浮気クズ男はお前の方じゃね? 中瀬の方がお前と別れて正解なんだわ」
「あぁ?」
「あと、中瀬の方がずっといい女だろ。わからないなんて、馬鹿じゃねえの?」