弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「でも」
「あれは、普通にムカついていろいろ……余計なことまでいろいろ言ってしまった自覚はある。普通に今、反省中」
「……ありがとう」
もう一度、お礼を言うと、弓木くんが笑う。
その瞳に冷たさはひとつもない。
ユウジくんに向けていたあの氷のような冷たさが嘘みたいだ。
「てか、昨日も聞いたけど」
「うん?」
「……ほんとに、中瀬はあんな男のどこがいいの」
「だから、体育祭のリレーのアンカーを走ってて」
「それさ、アンカー走ってたら誰でも恋に落ちるの」
「そんなことはないよ!……たぶん!」
「多分かよ。たとえば、俺がアンカー走ってたら、俺のこと好きになった?」
「え」
弓木くんが……?
思わずまじまじと弓木くんを見つめてしまう。
どう、だろう。
ゴールテープを切るユウジくんの姿を弓木くんに置きかえてみるけれど、ううん、あんまり、よくわからなかった。
神妙な顔をするわたしに、弓木くんはくすっと笑う。