弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「中瀬は電車?」
「うん。弓木くんは?」
「俺はバス」
「えっ、じゃあ反対方向じゃん!」
駅とバス停は、ここからじゃあ反対方向だ。
慌てて弓木くんの手を離そうとしたけれど、逆に強く捕まえられてしまう。
「離れるの禁止」
「へっ?! なんで」
「駅まで送る」
「でも……っ、弓木くんの帰りが遅くなるよ?」
「いいんだよ。デートなんだから、最後まで一緒にいたいじゃん」
デート……だから。
これが、ほんとうの、デートなの?
最初から最後まで、一緒にいて楽しくて。
わたしのしたいことに付き合ってくれて。
「わたし、はじめてかもしれない」
「うん?」
「デートの最初から最後まで、ずっと、楽しいって気持ちでいられたの」