弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「……だって、止まらないんだもん……」
ひっく、ひっく、としゃくりあげる中瀬。
いつもばかのひとつ覚えみたいに『佐藤くん、佐藤くん』って騒がしかった中瀬があんまり苦しそうに泣くから。
「そろそろ泣きやめば」
「無理だよお…………ぶええ」
「……。なんか飲む?」
「……え」
「自販機に売ってるやつ」
「へ……」
中瀬の腕を引いて、ピロティの自販機の前まで移動する。
ここは部活の時間になると、あまり人が通らなくなる。
一応、ぐしゃぐしゃに泣いている中瀬への配慮だった。
「ほら、選べば」
「いい、の……?」
「泣き止むならな」
「ん……。ミルクティーにする」
買ってやったミルクティーをちびちび飲みながら、中瀬はなんとか涙をとめて。
真っ赤になった土偶みたいな目をハンカチでおさえながら。
「……弓木くんにも、人の心ってあったんだね……」
「はあ?」
「だって、いっつもわたしのこと無視するじゃん」
「あー……」
だって、女ってめんどくさいから。
中瀬だけの話じゃない。