弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「そんな弓木くんに、聞きたいのですが」
「……なに」
「わたし、どうしたらよかったのかな。男心っていうものが、よくわからないの……。喜んでくれたら嬉しいなって思って、頑張ったつもりなんだけど、佐藤くん的には気持ち悪かったってことだもんね……。うう……」
なぜか、本気で反省会をはじめる中瀬に驚いた。
「あいつ……佐藤とかいう奴のこと、恨んでねえの?」
「恨む? なんでっ? わたし、佐藤くんのこと好きなんだよっ? 恨むわけないよ」
「作った飯、捨てられといて?」
「それは、わたしが捨てられるようなものを渡したから……。あのね、最初はひとめぼれだったの、入学式のときにわたしが落としたハンカチを拾ってくれて……これが、そのハンカチなんだけど」
ありがとうと言うと笑顔を向けてくれたからキュンとして、目で追いかけているうちにもっともっと好きになって、サッカーをしてる姿が好きとか、なんとかかんとか。
永遠に佐藤とかいうやつの好きなところを聞かされて。
それでまたぽろぽろと涙をこぼしはじめた中瀬を見ていると、ふつふつと心のなかに何かが湧き上がってくる。
こんなに、純粋にまっすぐに真剣に思われているなら。
────俺なら、この子のこと、傷つけるようなことしないのに。
「……え?」
知らない感情に戸惑う。
「弓木くん……?」
泣き腫らしたままの土偶みたいな目で、中瀬がじっとこちらを見つめてくる。
涙でうるんだ瞳がなぜか、心臓のど真ん中に突き刺さってくる。